Kinetic Chain — 歪みの帳尻合わせが生み出す連鎖
当院が用いている矯正技術はNC(ニューカイロプラクティック)理論を基盤としており、身体が生まれ持つ自然治癒力(Innate Intelligence)が正常に発揮されることを目的としています。「歪み」を正しく理解するための3つの要素のうち、ここではカンパセーション(Compensation)を解説します。
カンパセーション(代償動作・代償運動とも呼ばれる)とは、身体が一次的な機能不全(脊椎のフィクセーション・関節の痛み・構造的非対称性など)を補うために、他の関節分節や姿勢制御系を介して二次的な運動や姿勢の変化を生じさせることです。重心の安定化・疼痛の回避・運動機能の維持を図るために無意識下で起こる現象です。
身体の固定的な構造の非対称性に対応するために発生する、永続的な姿勢・アライメントの変化。脚長差(骨長の不均衡)・脊柱側弯・重度の骨関節炎による関節変形などが原因となり、脊柱や骨盤がその構造に合わせて歪んだ状態となります。
運動制御系の異常(VSC)や急性・慢性の疼痛回避行動によって発生する運動パターンの変調。例えば腰椎のフィクセーションによる動きの不足を補うために胸椎や股関節が過剰に回旋する動きなど。一次性の機能不全が解消されれば理論的には回復可能とされています。
カンパセーションは全身を網羅する運動連鎖(Kinetic Chain)を通じて伝播することが特徴です。伝播の方向は大きく「上行性」と「下行性」の2種類に分類されます。
カンパセーション部位は機能低下部位の動きの不足を補うために構造的にも機能的にも過剰に動く傾向があります。必然的に機械的ストレスが蓄積しやすく、時間の経過とともにその過剰な負荷が炎症・変性・慢性的な疼痛を引き起こします。
患者は下部頸椎の運動制限を自覚するよりも、代償部位である肩こりや頭痛を主訴として自覚しやすい。これがカンパセーションが本来の原因箇所を見逃すリスクを持つ理由です。
フィクセーション・サブラクセーション・カンパセーションは相互に複雑に影響しあっており、それぞれ施術の目的や効果が異なるため明確な鑑別が必要です。
局所的なモーション・パルペーションを用い、特定の運動分節における関節可動域の減少を確認します。
フィクセーションの所見に加え、筋力検査・反射検査・神経機能評価において神経生理学的異常(ニューロパソロジー)が確認される。単なる構造的問題を超えた神経系の機能障害の存在を示します。
複数の分節にわたるパターン化された可動域の変化として現れます。一つの分節がフィクセーションを示すのに対し、別の分節が代償的に過剰運動(ハイパーモビリティ)を示す連鎖パターンが典型的。疼痛の訴えが生体力学的負荷の集中する代償部位に偏っていることが多い。
NC理論においては、矯正部位は症状を引き起こしている原因となっている一次性のサブラクセーションまたはフィクセーションに行います。カンパセーション部位はその原因が取り除かれれば自然に安定化に向かう傾向があるため、代償部位のみを調整することは理論的にも合理的ではありません。
これによりカンパセーションの原因となっていた機能不全が取り除かれ、身体は自己調整能力を介して自発的に正常なアライメントと運動パターンを取り戻すことが可能となります。なお長期的な再発予防のためには、アジャストメントに加えて姿勢指導や運動療法も不可欠です。
局所的な関節の運動機能不全(Hypomobility)
フィクセーションが神経生理学的異常を伴う広義の複合体(VSC)
一次性機能不全を補うために全身の運動連鎖を通じて発生する二次変化
この三つの相互に深く関連した動的な概念を理解することが、
効果的な予防と高い施術効果を生み出す基礎となっています。
カンパセーションとは、歪みの帳尻合わせにより本来の役割以上に働いている部位のことです。痛い場所と原因の場所が違う理由の正体であり、代償部位だけを施術しても根本解決にはなりません。
当院ではNC理論に基づき、全身の運動連鎖を分析して一次性の病変を正確に鑑別・施術することで、根本からの改善と再発予防を目指しています。今後も勉学に励み、施術効果の最大化を図ってまいります。
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