日常生活の動作や様々なスポーツ動作は、主に体幹部で作られたパワーを手や足などの抹消部に伝えることによって行われます。(これをキネティックチェーン:動きの連動連鎖といいます)
しかしながら何らかの原因で体幹部に問題があると姿勢が悪くなってしまいスポーツ動作を円滑に行えないどころか日常生活にさえ支障をきたすことがあります。
姿勢が悪くなってしまう主な原因は骨盤の歪みや筋バランスの乱れ(筋力バランスと柔軟性バランスが左右、あるいは拮抗筋群との間でとれなくなってしまう)にあります。
この場合、パワーの発揮は抹消部(手足)が受けもつことになるので、どうしても身体に負担が掛かり、障害に繋がりやすくなってしまいます。
正しい姿勢を保つということはスポーツパフォーマンスを高める上でも日常生活を快適に営む上でも、とても重要であると言えます。それでは一般的にいう『正しい姿勢』とはどのような姿勢を指すのでしょうか?
正しい姿勢とは(側方から)
正しい姿勢とは脊柱(背骨)、肩甲骨、骨盤などが正常な位置にあり主動筋、拮抗筋がバランス良く動き、疲労しないような効率の良い姿勢のことをいいます。それでは以下に正しい姿勢(側方から)の定義をご紹介します。
①外踝(がいかと読む:外くるぶしのこと)の約2cm前方から垂線を引きます。(赤色の線)
②垂線上(赤色の線)に耳孔(じこう)、肩峰(けんぽう)、大転子(だいてんし)、膝関節前部の4点(外踝を含めると5点)が全て並ぶのが理想的な姿勢であるとされています。
上から一番目の●:耳孔
上から二番目の●:肩峰(けんぽう)※肩の中心
上から三番目の●:大転子(だいてんし)※太ももの横にある少し出っ張ったところ
上から四番目の●:膝関節前部
上から五番目の●:外踝約2cm前方
これら4点、あるいは5点中1点でも狂いがあると、いわゆる生理的湾曲が崩れ不良姿勢と呼ばれる状態に陥ってしまいます。
具体的な測定方法としては第三者に真横から見てもらうのが最も簡易的です。
しかし、ある程度熟練した人に見てもらわないと見誤ることがあります。
そこでお勧めしたいのがデジタルカメラを使用してアライメントチェックする方法です。
まず用意するものとしてはデジタルカメラ、三脚、三角定規、赤の油性ペンなどです。
また、撮影の際は体のラインを読みやすくするためTシャツやスパッツを着用して撮影に望むことをお勧めします。以下が手順です。
- デジタルカメラに三脚を取り付け、デジタルカメラが水平になるようにセッティングします。
- 壁から約20~30cm離れたところに立ち、撮影をします。このときモデルは力を抜き、なるべく姿勢を意識せず普段の立位姿勢を再現するようにします。
- 写真撮影を終えたら三角定規、赤の油性ペンなどを用いて外踝前方から垂線を引きます。
- 赤いラインに対しチェックポイントがどこにあるかをチェックする。
これにより目視よりも的確なアライメントチェックができます。
ちなみに上から三番目の●大転子が必要以上に後方にあると腰椎前弯症(図2.参照)と呼ばれる腰が反った姿勢になってしまいます。
腰椎前弯症は腰椎の棘突起にストレスが過度に掛かるので背骨の安定性が保てなくなり、脊椎分離症(せきついぶんりしょう)、更には腰椎すべり症を招く恐れがあります。
また、大転子は前方にあると疲労姿勢(図3.参照)と呼ばれる腰を前に突き出したような姿勢になってしまいます。疲労姿勢は主に筋力の低下によって生じますが、アンバランスなトレーニングを行っていてもなります。
股関節周辺や腹部の筋力が足りないと上半身が後ろに逃げてしまい、前後のバランスがとれなくなって、腰部に強いストレスがかかるようになります。